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iPadは手が不自由なかたにもやさしいのか?

  • 2011年October11日(Tue) 12:00 JST

手足が不自由なため車椅子で生活されているAさんにiPad2を実際に使ってもらい、使えない事等ないかを教えてもらいました。

また、手がまったく使えないかたがiPad2を使うにはどうすればいいかを考え検証してみました。

AさんとiPad

まずはAさんの話から、Aさんは20代とお若くiPadは友達のを使った事があるとの事でした。どういう使い方をされているかというとスターバックスで友達が持っているiPadにiPad Camera Connection Kitを付けAさんが持ってきた旅行の写真データが入っているSDカードを差し込みiPadに写真を表示させて友達と写真を見ながら楽しい時間を過ごされ、次に食事に行く場所を決めるのに本を持って外出するのは大変なのでiPadでバリアフリーのお店を検索して友達と食事に行くそうです。

私のiPad2をAさんが実際に操作をしてみて

Aさんは、左半身は半麻痺(左指でのキーボード操作可能)右半身は全麻痺だそうです。今回はあえて指が動かない右手で操作していただきました。


右手をグーの形にし小指を下にした状態で小指の第二関節あたりで操作する形でiPad2の電源入れ(上にあるボタンを押す)、フリック(スライド操作)、ドラッグ(上下移動)、タップ(アイコンなどを押す)、文字入力の操作をしていただいたところ、問題なくこなされてました。

文字入力は、iPad2を横に向けたほうがタップ領域が広くなるのでそのほうが操作しやすいとの事でした。ホームボタンを押すのも軽いので大丈夫、横に他のボタンが並んでないので、違うボタンを間違えて押す事もないけれどボタンがもう少し大きいほうが操作しやすいとの事でした。

iPad2で本を読む

紙媒体の本は、ペーシをめくるのが大変で、本を開いた状態にするのに両手で押さえて置く事が出来ないそうです。特に単行本はサイズが小さいから難しいそうです。
iPad2でのページめくりはらくらくで、拡大縮小する(ピンチアウト・ピンチイン)には両手を使えば可能でした。

スクリーンに指で文字を書く

筆談用のアプリ「筆談パット」を使いAさんに文字を書いてもらいました。

Aさんが右手で書かれたものと私が右指で書いたものを横に並べたキャプチャ画像です。よく見比べてください。ほとんど変わりない…いえAさんの方が綺麗にかけてますよね。Aさん曰く「ペンを握らなくていいからスクリーンに書くほうが楽。ペンは握ったり離したりするのが大変だから」との事です。

手がまったく使えないかたがiPad2を使うにはどうすればいいか

まずは、プリンストンテクノロジー iPad/iPhone/iPod touch専用タッチペンをAさんが手につけている車椅子用グローブに差して操作していただきました。(以前、Aさんが「グローブにボールペンを差してキーボード操作している人も結構いるんですよ」と話されてた事を思い出し、この方法を思いつきました。)

フリック(スライド操作)、ドラッグ(上下移動)、タップ(アイコンなどを押す)、文字入力の操作をしていただいたところ、すべての操作を問題なくこなされてました。
Aさんの感想ですが「タッチペンは長さが短く、グローブに差しているだけで固定がしっかりしていないのでグローブから抜けてしまいそうな感じがするけど、タッチ等操作はしやすい。」との事でした。
尚、iPad2は保護フィルムを貼っていない状態になります。(保護フィルムを貼ると感度が悪くなるようです)

そして、タッチペンを手で操作する事が出来ない事を想定し、私がタッチペンを口にくわえ、スリープ状態(スタンバイ状態)からホームボタンを1回押しフリックしてロックを解除し、SafariをタップしてFacebookにアクセスしました。そして、メールアドレスとパスワードを入力しログインして情報をドラッグしながら閲覧しました。ドラッグの動作ですが、縦に長いページで上に戻るのが大変だったのですが、iPadのステータスバーをタップすると一気に上まで戻れるので問題ないと思いました。

この操作をするには、首が動く事と口でタッチペンをくわえてられる事が必要になります。また、このタッチペンの長さが11.1センチという事もあり、前かがみの姿勢で操作する事になります。足の上に置いて操作する場合は、かなり前がみにならないとスクリーンまで届かないので、机の上などに置いて操作する事をお勧めします。

私が操作してみた感想ですが、私は顎関節症なので、首を動かす事よりタッチペンを口にくわえている事の方がしんどく感じました。タッチペンを口にくわえた状態を保つ事は、私が思ってた以上に唇、歯、頬、あごの力が必要だという事もわかりました。また、タッチペンを口にくわえているとどうしてもよだれがでてきてしまうので、口にくわえる部分にテッシュを1枚巻いて操作しました。短時間の操作なら、そうする事でよだれがスクリーンに落ちる事を防ぐ事が出来ました。
疲れたら休憩を入れるようにして自分のペースで操作すれば使えるかと思います。

次に、Aさんがキーボード操作にいつも使われている自助具 のタイプエイドmomiji gloves touch(モミジグローブ タッチ)スマートフォン対応手袋の親指を被せて余った部分をゴムひもでくくった状態で操作していただきました。

フリック、ドラッグ、タップの操作をしていただいたところ、問題なくこなされてました。
Aさんの感想は、「手袋をきっちりつければもっと使いやすいと思う。」との事だったので
私が「手袋の指の部分だけ切り、ピッチリ装着しておいたらどうですか?」と尋ねたところ、Aさんは「それだったら使いやすいし問題ないと思います。キーボード操作をする時でもそれを装着したままでも問題ないです。タイプエイドを使った方がしっかり固定されるので、ホームボタンを押す操作等しやすいです。」と返答いたたぎました。

そして、自助具を使えない状態を想定しmomiji gloves touch(モミジグローブ タッチ)スマートフォン対応手袋の中指に割り箸2本を差してゴムひもで取れないように括り付けたもの

名づけて“みるく棒”。
これを口にくわえて、スリープ状態(スタンバイ状態)からホームボタンを1回押しフリックしてロックを解除し、SafariをタップしてFacebookにアクセスし、メールアドレスとパスワードを入力しログインして情報をドラッグしながら閲覧したところ問題なく操作できました。

操作してみた感想等ですが、“みるく棒”の長さは20.5センチあり、iPad2を机の上に置けば深く前かがみにならずに操作出来きました。その点ではタッチペンを使用するよりこちらのほうが楽に感じました。それ以外は、タッチペンを口にくわえた場合と同じでした。

全体を通して

障害の違いや重度か軽度かの違い、若いか高齢かの違い、同じ障害でも個人差があるので今回の検証はほんの一例に過ぎないかもしれませんが、今回Aさんから教えていただいた事を一人でも多くのかたに知ってもらい、iPadを使いたいけど自分には使えないだろうと思っているかたが「工夫すれば自分にも使えそうだ。さっそく挑戦してみよう」と思ってもらえれば嬉しいです。

「慣れれば使えるし、頑張ったら使える。時間がかかっても使いたいと思う」と言われたAさんの言葉に私は心打たれました。人の気持ちをこんな風にする力のあるiPadは人にやさしいものだと私は思います。iPadの進化と共に誰もがより使いやすいものとなり、少しでも不自由さが軽減され楽しく便利な生活が出来るようになっていく事を望みます。

最後になりましたが、この記事を書くためにご協力いただいたAさんには心から感謝申し上げます。